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東京高等裁判所 平成8年(ネ)5206号 判決 1997年1月29日

控訴人・附帯被控訴人(以下「控訴人」という。)

社団法人全国社会保険協会連合会

右代表者理事

永野健

右訴訟代理人弁護士

加藤済仁

宮澤潤

右訴訟復代理人弁護士

松本みどり

岡田隆志

被控訴人・附帯控訴人(以下「被控訴人」という。)

長谷川巌

右訴訟代理人弁護士

弘中惇一郎

加城千波

主文

一  本件控訴に基づき、原判決主文第一項を次のとおり変更する。

1  控訴人は、被控訴人に対し、七八四万四七九〇円及びこれに対する平成五年一月六日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

2  被控訴人のその余の請求を棄却する。

二  本件附帯控訴を棄却する。

三  訴訟費用は第一、二審を通じてこれを五分し、その一を控訴人の、その余を被控訴人の各負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  控訴人

1(一)  原判決中控訴人の敗訴部分を取り消す。

(二)  被控訴人の請求を棄却する。

2  被控訴人の附帯控訴を棄却する。

3  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

1  本件控訴を棄却する。

2  附帯控訴として

(一) 原判決中被控訴人の敗訴部分を取り消す。

(二) 控訴人は、被控訴人に対し、三〇一一万〇九六〇円及びこれに対する平成五年一月六日から支払いずみまで年五分の割合による金員を支払え。

3  訴訟費用は第一、二審とも控訴人の負担とする。

4  2(二)につき、仮執行の宣言。

第二  当事者の主張

次のとおり付加、訂正するはか、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。

一  原判決の訂正

1  原判決一〇頁一行目の「により」を「のほか、不的確な縫合操作が加わって」に改める。

2  同一二頁九行目の「早くて」を、同行から一〇行目にかけての「、遅くとも右手術から一年後の平成四年六月」をそれぞれ削る。

3  同一三頁三行目の「半分程度」の次に「の時間」を加える。

二  被控訴人の主張

原判決は、被控訴人の逸失利益を認めていないが、千葉義塾は個人会社であるところ、個人会社では、会社経営上の税務対策として、給与の支払を計上することはよくあることであり、被控訴人本人の税務申告書類に減収の記載がないからといって、減収の事実が存在しないとはいえない。また、原判決は、千葉義塾の収入が減少したことは、会社の損害であって被控訴人個人の損害ではないというが、小さな家族的企業体にあっては、損害の主体が判然としているとはいえないはずである。このような場合には、会社が損害賠償を求める方法によることも、会社の代表者個人が損害賠償を求める方法によることも、いずれも許されると解すべきである。

第三  証拠関係

本件記録中の証拠関係目録記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

一  請求原因1(当事者)について

原判決理由一に説示のとおりであるから、これを引用する。

二  請求原因2(被控訴人の入退院の経緯)について

次のとおり付加、訂正するほか、原判決理由二に説示のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決二二頁九行目の「第八号証、」の次に「第一三、第一四号証」を加え、同二九頁五行目の「より」を「にて」に改め、同一〇行目の「授動」の次に「(十二指腸のほぼ全体を後腹膜より遊離して胃の方向に近づける処置)」を加える。

2  同三〇頁四行目の「本件手術の際、吻合部の緊張がやや高いことを認め」を「残胃の吻合部の緊張がやや高かったこと及び微熱があったため」に、同七行目の冒頭から同三一頁六行目の末尾までを次のとおりそれぞれ改める。

「一 被控訴人が、本件手術後間もなくから、継続して激しい創痛(腹筋がつるような痛み)及び時には背部痛(背中の左側の肩胛骨の後ろが常に押されているような痛み)をも訴えたので、鎮痛剤として、五月一一日までペンタジン、アタラックスPが、同月一六日まで塩酸モルヒネがそれぞれ投与された。なお、被控訴人は、その後も、同月二四日ないし二七日に背部痛を訴えたが、その後は背部痛についての積極的な訴えはなくなった。

二  被控訴人の体温は、控訴人病院に入院した当初の五月一日から同月三日にかけては36.5度ないし36.8度の間で推移し、外泊から帰院した同月六日から同月九日の本件手術までは三七度付近で推移していたが、本件手術後には38.0度に上昇し、その後、三八度以上で推移し(最高は同月一〇日が38.5度、同月一一日が38.3度)、同月一二日から同月一六日までは、ほぼ三七度から三八度の間で推移していたが(その間の最高は、一二日が37.9度、一三日が37.9度、一四日が37.5度、一五日が37.8度、一六日が37.4度)、同月一七日に一旦36.5度まで落ちた後、上昇に転じて37.8度になり、その後、同月一八日及び同月一九日に大きく上下を繰り返し(最高は、一八日が38.4度、一九日が37.9度)、その後、同月二八日までは、三七度を中心にして、上下ともほぼ四分の範囲内で推移していたが、同月二九日に急上昇して、最高が38.3度となり、翌三〇日も37.6度以上で推移し(最高は38.1度)、その後六月二〇日までの間、再び三七度を中心にして上下を繰り返しながらも、全体的にほぼ横這い状態となったが(その間の目立つ高温は、六月二日の37.5度、三日の37.6度、八日、一一日、一三日、二一日の各37.5度である。)、六月二二日に39.2度まで急上昇し、同月二三日には三七度前後にまで低下したものの、翌二四日には三八度前後で推移し、同月二五日には三八度以上で推移し(最高は38.6度)、その後は同月二八日まで大きく上下を繰り返した(最高は、二六日及び二八日の各38.9度)。」

3 同三一頁九行目の「二二日には」の次に「流動食の」を加え、同一〇行目の「睡眠を妨げるほどの」を削り、同末行の「の訴えがあり、鎮痛剤であるレペタン投与により入眠した」を「があり我慢できないからなんとかして欲しいとの訴えがあったので、三〇分後に鎮痛剤であるレペタンを投与しようとしたが、その際には既に入眠していた」に改める。

4 同三二頁五行目の「であったが、」から同六行目末尾までを「、同月二九日に六七〇〇であった。また、好中球数増加の場合に、核の左方移動があれば感染症が疑われ、好中球数は健康者で二〇〇〇ないし七五〇〇であり、一般に桿状核球一四パーセント以上をもって核の左方移動があるというところ、同月二九日の検査結果では、好中球数は五〇二五であるが、桿状核球は一五パーセントであった。」に改め、同七行目の「原告は」の次に「、同月三〇日午前七時ころ、ドレーン除去部痛のため眠れなかったと訴えるとともに軽度の悪寒の訴え」を、同八行目の「転倒し」の次に「、帰室後腹痛を訴え」をそれぞれ加える。

5 同三三頁一行目の「鎮痛剤及び」を削り、同二行目の「三七度台の」を「三七度を前後し、時には37.5度にも達する」に改める。

6 同三四頁三行目から四行目にかけての「、食事をしたとたんに」を削り、同三五頁四行目の「乖離」を「剥離」に、同三六頁三行目の「約五ミリメートル」を「一四フレンチのバルーンカテーテルが通る大きさ(直径五ミリメートル)」に、同三七頁五行目の「痛みはひどく、鎮痛剤が絶えず」を「被控訴人が創痛等及び不眠を訴えたので、主として入眠目的でペンタジン、アタラックスPが連日」にそれぞれ改める。

7 同三八頁七行目の「説得したが、」の次に「被控訴人が転院するとの意向であったので、」を加え、同末行の「、九」を削る。

三  請求原因3(縫合不全)について

当裁判所も、五月三一日から始まった被控訴人の吐血及び下血の原因は、胃壁部の穿通によるものであり、右の穿通は、縫合不全によって生じたものであると認める。その理由は、次のとおり付加、訂正するほか、原判決理由三に説示のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決四〇頁八行目の「壁部」を「吻合部後壁側」に改める。

2  同四一頁三行目の「第五号証」の次に「、第一一号証」を加え、同七行目の「感染症」を「炎症症状」に改める。

3  同四二頁末行の「過度緊張」を「緊張過度」に改める。

4  同四三頁二行目の「癌浸潤」の前に「吻合部の」を加え、同七行目の「をなるべく正常に近く」を「がある場合には、なるべく正常に近い状態に改善」に改める。

5  同四八頁四行目の「排膿」の次に「、排液」を、同四九頁一〇行目の「胃切除」の次に「・吻合術」をそれぞれ加え、同五〇頁二行目の「空置式」を「空置的」に改める。

6  同五三頁三行目の「通常は」から同四行目の「である」までを「胃の切除部分が大きい場合には、予め十二指腸の授動をしておかないと、縫合し難いことがあり、また、それ程ではないとしても、縫合しようとする部分が引っ張られることになり、十全な縫合を期し難いことがあるので、吻合の前にこの操作を行い、余裕をもって吻合を行うのが望ましい」に、同六行目の「なく、右のような状態で使用された場合、」を「ない(皮下組織に埋没した場合、徐々に抗張力が低下する。)こと、他の縫合糸等と同様に」に、同八行目の「強いことが窺えた」を「やや高いことを認めた」にそれぞれ改める。

7  同五四頁四行目の「三七度」から同六行目の「上昇があり」までを「、前記二4(二)に認定したとおりに推移しており、これによれば、本件手術後二日間は、三八度以上の発熱があり、その後、下降して三七度台になったが、術後九日目の五月一八日には再び38.4度の高熱が出、その際の脈拍数は一分当たり九六であった(乙一三)のであり、更に」と改める。

8  同五五頁二行目冒頭の「り、」の次に「また、前記二5に認定したように、呉医師が好川及びみよ子に対し、被控訴人の出血の原因は縫合不全である旨説明しているのであって、」を、同末行の末尾に続けて「なお、控訴人病院から井上病院に交付された「看護サマリー」(甲一の一九二頁)にも、「縫合部後壁に縫合不全があり、そこからもれたものが貯って太い血管壁を溶解して出血した。」との記載がされており、右の認定判断を裏付けている。」をそれぞれ加える。

9  同五六頁五行目の次に行を変えて次のとおり加える。

「なお、控訴人は、当審において、乙第一五号証(控訴人病院院長藤本茂作成の意見書)を提出しているところ、これには、①本件手術後の被控訴人の疼痛は、本件手術のような手術を受けた患者に生じるものと特に変わったものではないこと、②術後の発熱は、感染症以外に縫合不全や胸水貯留などの術後合併症ばかりでなく、便秘を伴う上部消化管内容物の停滞でも起こるのであり、被控訴人に五月一九日まで三七度台の発熱が続いた主因は、腸管内容物の停滞であると推測できること、③アルバート・レンバート法が、縫合法として問題があるとはいえず、まして、他の縫合法と比較して縫合不全の一因となりやすいなどとはいえないこと、④十二指腸の授動は、患者にとってマイナスにはなってもプラスにはならないことがあるので、全ての症例において、十二指腸の授動を行わなければならないものではなく、まして、吻合前に十二指腸の授動を行わなければならないものではないこと、⑤本件において、吻合部にマクソン糸を使用したことは、最新にして最も安全確実な縫合糸を使用したものということができること、⑥呉医師がバリウムを用いて残胃透視を行ったのは、それまでの経過から穿孔(縫合不全)とは考えられなかったこと、及び排便が正常に近い状態となっていたので、バリウムの排泄に意を払う必要がなかったことに照らして、適切なものであったと判断できることの各記載がある。しかしながら、右①ないし⑥は、いずれも看護記録や一般的な医学的知見に基づき推測・意見を述べるだけで、本件における具体的状況との関連性を欠くものというべきであるから、乙第一五号証中の右の点に関する記載をもって、前記の認定を覆すことはできない。

次に、同号証は、被控訴人の出血の原因は、縫合不全ではなく術後吻合部潰瘍と診断できるとし、その根拠として、①縫合不全により発熱を来したとき、縫合不全に対する処置を行わずに、その後解熱することはないこと、②バルーンカテーテルによって穿通が治癒した(井上病院において、穿通に対して新たな処置は行われていない。)ことは、穿通が吻合部の潰瘍であり、バルーンにより潰瘍からの出血が圧迫止血されたことを挙げている。被控訴人の体温を見ると、五月一七日、一八、一九日に高温となった後、三七度前後に落ちており(その後、同月二九日、三〇日に再び高温となった後、再度三七度前後になっている。)、確かに、この点は、縫合不全が発生した場合の典型的な症状とはいささかそぐわない面があると窺われるが、既に判示したとおり、現に本件手術及び再手術をして、縫合部の状態を最もよく把握しているはずの呉医師が、再手術後、縫合不全であるとの認識を有していたのみならず、被控訴人の関係者や専門家である転医先の医師にその旨を口頭又は書面で伝えていること、その他縫合不全の存在を裏付ける事情が存在すること等に照らすと、前記のような点があっても、前記の認定判断を覆すには足りないというべきである。また、縫合不全に対する治療法としては、原則として、縫合不全部の再縫合、再切除による吻合等の積極的な手術は行わない方がよく、適切なドレナージを行うことが最も重要である(前記三2(五)参照)ところ、井上病院に転医した際には、既にドレナージが行われ、八本のドレーンが挿入された状態にあったのであるから、井上病院において穿通に対して新たにドレナージの処置は行われていないにもかかわらず、穿通が治癒するに至ったからといって、右の穿通が縫合不全によるものではなく、吻合部潰瘍によるものであるとする根拠とはならないというべきである。」

四  請求原因4(呉医師の過失)について

当裁判所も、呉医師には過失があったものと判断する。その理由は、次のとおり付加、訂正するほか、原判決理由四に説示のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決五六頁七行目の冒頭から同五七頁八行目の末尾までを次のとおり改める。

「1  被控訴人は、本件手術における縫合不全は、呉医師の術式選択及び縫合手法の過誤並びに不的確な縫合によるものである旨主張するので検討する。

縫合不全は複数の因子が関与して起こり、その原因を特定することは困難であるところ、胃の切除手術における術式及び縫合手法は、数種のものが考案されているが、そのいずれも一長一短があるから、医師が患者の病状等から相当と信ずる手術手法によって行ったとしても、縫合不全が発生することはある程度避けられない面があることは、前記の医学的知見に照らして明らかである。しかしながら、呉医師は、本件手術において、開腹して一旦病変部の切除をした後さらに追加切除をして、胃の約四分の三を切除し、アルバート・レンバート法による二層縫合を行い、また、吻合後に十二指腸の授動を行っているところ、胃の追加切除を行った場合、吻合部の緊張が強くなることがあり、また、右アルバート・レンバート法による二層縫合は、吻合部の血流を悪くするといわれていること、胃の切除部分が大きい場合には、予め十二指腸の授動をしておかないと、縫合し難いことがあり、また、それ程ではないとしても、縫合しようとする部分が引っ張られることになり、十全な縫合を期し難いことがあるので、吻合の前にこの操作を行い、余裕をもって吻合を行うのが望ましいこと、本件手術の際に用いられたマクソン糸は、糸に強度の緊張がかかるような状態での縫合には使用すべきではないことなど前記の事情及び被控訴人に縫合不全が生じたものと認められること並びに原審証人井上毅一の証言によって認められる本件手術当時の医療水準に照らすと、呉医師の選択した術式及び手法に誤りがあったか若しくは縫合の過程において手技上の過誤があったことによる過失があったものと推認するのが相当である。」

2  同五七頁九行目の「ところで」から同五八頁二行目から三行目にかけての「しかしながら」までを「なお、念のため付言するに、仮に、右1に説示した過失が認められないとしても、呉医師には、次の点で過失があったといわなければならない。すなわち」に改める。

3  同五九頁三行目の「手術」から同四行目の「背部痛が」までを「手術後九日目の五月一八日には再び38.4度の高熱が出、その際の脈拍数は一分当たり九六で」に同八行目末尾の「強」を「やや高」にそれぞれ改める。

4  同六〇頁一行目の「からも」を「にも留意して」に改める。

5  同六一頁二行目の「であるが、」の次に「原審証人井上毅一の証言によれば、」を、同四行目の「できる」の次に「ものと認められるのである」をそれぞれ加える。

五  請求原因5(損害)について

1  逸失利益 〇円

原判決理由五1に説示のとおりであるから、これを引用する。

なお、被控訴人は、被控訴人の職場復帰が遅れた少なくとも半年間に、その経営に係る千葉義塾の収入が減少したことを前提として、被控訴人の逸失利益を云々しているが、千葉義塾の営業報告書等右の事実を認めるに足りる客観的な証拠は提出されていないのみならず、被控訴人本人は、当審において、被控訴人が入院したことなどにより、千葉義塾の売上げは、上がるはずであったところが上がらなかった(なお、現在は不況のため受講生数の減による売上げのダウンがある。)旨供述しているにすぎないのであって、これによって被控訴人の主張事実を認めることはできず、他に右事実を認めるに足りる証拠はない。

2  慰謝料 五〇〇万円

原判決理由五2に説示のとおりであるから、これを引用する。

3  治療費 一五七万八五四〇円

原判決理由五3に説示のとおりであるから、これを引用する。

4  入院付添費二六万六二五〇円

証拠(当審における被控訴人本人)によれば、被控訴人は、井上病院に転院した平成三年六月二八日から一か月間、友人である好川百合子に泊込みで付添看護をして貰い、その後は、同病院を退院した九月二四日までの間、好川に週三、四回の割合で通いで付添看護をして貰ったほか、被控訴人の妹が四、五回泊込みで、その他の親族が二、三回通いで、それぞれ付添看護をしたことが認められる。右の事実によれば、三四日間の泊込みによる付添看護につき一日当たり五〇〇〇円、残りの入院期間の半分の日数の通いによる付添看護につき一日当たり三五〇〇円の限度で、本件事故と相当因果関係のある付添看護費用と認めるのが相当である。証拠(甲一八の1ないし3、原審及び当審における被控訴人本人)には、好川に付添看護費として合計二〇〇万円を支払ったとの記載ないし供述があるが、仮に、被控訴人が好川に対して合計二〇〇万円を支払ったとしても、付添看護料としては不当に高額であり、右判断を左右するものではない。

そうすると、次の算式により、入院付添費は二六万六二五〇円となる。

5,000×34+3,500×(89−34)×1/2=266,250

5  通院交通費 〇円

原判決理由五5に説示のとおりであるから、これを引用する。

6  弁護士費用 一〇〇万円

原判決理由五6に説示のとおりであるから、これを引用する。

六  結論

以上のとおり、被控訴人の本訴請求は、前記五の損害の合計七八四万四七九〇円及びこれに対する訴状送達の日の翌日であることが記録上明らかな平成五年一月六日から支払ずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるので認容すべきであるが、その余は理由がないので棄却すべきである。

よって、本件控訴に基づき右と一部異なる原判決主文第一項を右のとおりに変更し、本件附帯控訴は理由がないので棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法九六条、八九条、九二条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官塩崎勤 裁判官瀬戸正義 裁判官西口元)

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